エレベータやコンビニなどのドアを開けて待ってくれるのは
年齢と問わず、今までたいてい女性だった。
男性は「われ先に!」という人ばかりで、中には私が何かの拍子に先になると、舌打する人もいた。
「やっぱり男ってのはみんな女から生まれてくるものだから
女の方がなにかと『上』なんだ」
と思っていたが、イマドキの若者も捨てたもんじゃなかった。
銀座からの帰り道、地上から地下鉄へ降りるために、数寄屋橋近くのエレベータに乗った。
私が乗った後に男性が2人乗り込んだ。年の頃は20代後半から30代前半ぐらい。カジュアルな服装だった。
後から乗ってきた彼らは、当然2人並んで出入口に向き直る。
A「くせぇ!カレー臭いな!
ここは地下にカレー屋があるもんな?」
B「そうか。俺は地下鉄にあまり乗らないから知らないよ」
A「たしかここにはカレー屋とすし屋があるんだ!」
私に背を向けてそんな話をしていた彼ら。
ハイテンションのAとクールなB…この構成のコンビ、ありがちね…私はそんなことを思っていた。
地下1階までなのでエレベータはすぐ到着。
すると、ドアが開くと同時に飛び出したAをよそに、
後ろから出る私のために、長身のBが右ひじを上げ、右肩をドアに押し付けて、ステッキを持つ私が歩き出すのを待っててくれたのだ。
「すみません。ありがとうございます」
お礼も聞こえたかどうかの間に行ってしまったが、
気持ちがホンワカする出来事だった。