東京ドームの、とある一室。
何かのスイッチとおぼしきボタンやレバーが並ぶボードを前に、男が一人。
あちこちに設置されたカメラの数だけ並んだモニターで、戦況を見つめている。
8回裏終了と同時にベルの音。
「おいっ!いったいどうなってるんだ!?」
「…す、すみません」
「こんなにポコポコ出してたら気付かれるって、さっき言っただろ!?」
「はぁ…」
「しかも、この期に及んでアイツにポコポコ出たらたらまた契約がややこしくなるって言ってるのに、ポコポコポコたぁどういうことだ!?」
「それは…スイッチONから実際に流れが変わるまでは、少々時間がかかるのもので…」
「だーかーら!
お前、何年この仕事やってんだ!?
そういう時間差も考えろってことだよ!」
「…」
「9回は双方、絶対的な投手を立てるから、凡退でかまわん。お前は何もするな。
10回裏でサヨナラだ。
お立ち台で『最高でーす!』だ。いいな!」
「…わかりま…」
返事を待たずに話を切られた男。
「何もするな…だってよ」
一人ごちた男は、すべてのスイッチをOFFにした。
一発。
「う〜ん…何もするなって言われたのに何かすると、またうるせぇからなぁ…」
そこが「送風室」だと知るのは、限られた人間である。
※もちろんフィクション♪
【好】